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マルチレベルSEMの利点

マルチレベル共分散構造分析、あるいはマルチレベルSEMについて書いてみる。

マルチレベル共分散構造分析とは、二段抽出モデルとか、マルチレベル構造方程式モデルとか、いろいろ言われている。この記事では、一番簡単に、マルチレベルSEMと書く。

このマルチレベルSEMは、完全に対応しているのはMplusというSEMを中心とした多機能統計ソフトだけなのだ。なんでMplusだけなんだろうと思ったら、MplusはMuthenが作っていた!ついでにMuthenはマルチレベルSEMを実用的に完成させた人である。


んで、マルチレベルSEMを擬似的にできるのはEQSだ。EQSはMuthenの方法を行うために必要な、WithinとBetween(個人レベルと集団レベルと思ってもらってかまわない)を分割する作業を行ってくれる。


そして日本で多分一番使われているであろうSEMソフトのAmosでは対応していない。そのためにこの3ヶ月ほど苦労してきたわけだが・・・。ようやくAmosでマルチレベルSEMを実行できるところまできた。

AmosでマルチレベルSEMをやろうと思うと恐ろしく面倒くさい。近々その方法をまとめてアップするのでやりたい人はもう少しお待ちを。

資料にマルチレベルSEMを実行するプログラムを置いています!

さて、マルチレベルSEMは、いったい何がすごいのか。



1.集団レベルの分析を、集団の平均値を算出することなくできる
 集団内の平均値を算出して分析すると標準誤差が大きくなって分布が歪むことがわかっている(狩野・三浦,2003)。また、級内相関が低いときは相関の希薄化(推定値が真値より小さくなる現象)の問題が深刻化する。僕がもっているデータでは相関が.70が.50まで小さくなった。
 これをクリアするためにはHLMやマルチレベルSEMのような階層的データ解析を使う必要がある。

2.反復測定した尺度を一度に因子分析できる 
 反復測定も一種の階層データである。例えばいくつかの状況を想定させて、それぞれの状況で同じ尺度に答えてもらった場合、その因子分析はどのようにすればいいか。
 従来なら、1.データを全部ひっくるめて因子分析、2.場面ごとに別々に因子分析、3.個人内のデータを平均して因子分析、という方法である。上に書いた理由から1と3は却下である。2は間違えてはいないが、それぞれで因子構造が違ったりすると大変だ。解釈も大変だ。
 このようなデータの因子分析は三相因子分析と呼ぶ。マルチレベルSEMの場合、状況に依存する因子構造なのか、個人内で一貫した構造なのかを分離することができる。
ただ、この方法の三相因子分析は、ほぼ加法モデルと呼ばれるものに近い(正確には違う)。しかし、マルチレベルSEMを三相分析と呼んでいるのを見たことがないので、あまり大きな声ではいえない。なのでマネして怒られても責任取らないのでよろしく。

3.SEMの利点がそのまま反映される。
 SEMの上位モデルなので、自由なモデリングと適合度指標の出力という利点がある。この点はHLMに勝る点である。HLMは多重共線性の存在を知るすべがないし、適合度も尤度比検定しか出力してくれない(たぶん計算はできると思うが、ソフトウェアが対応していない)。
 また、HLMは従属変数が1変量だがマルチレベルSEMは多変量に拡張できる。あとHLMには実はいろいろ弱点があるのだ。それについては清水(2006)を参照してください。


とまぁ、利点は多い。ただ欠点もないわけではない。一応挙げておこう。

1.面倒くさい
 これだけはどうにもならん。ペアワイズ相関分析もそうだったが、モデリングが面倒である。ただ科学を行ううえで「面倒だからしない」は通用しないはずである。

2.級内相関が低すぎたり高すぎたりするときの問題 級内相関が極端な値のとき、相関係数が1を超えるときがある。Kenney & LaVoie(1985)は級内相関が有意であるときに集団レベル相関を解釈すべきといっているが、サンプルが多いと.10でも有意になってしまう。僕の経験からして、.25(最悪.20)以上ないと解釈は危険だと思う。これは逆もしかりで、.80以上あると個人レベルの相関の解釈が危険だ。

3.個人レベルの変数の、集団レベルの分析の解釈 
 一番の問題はおそらくこれ。例えば関係満足度というような個人に帰属される概念を集団レベルのモデルに組み入れるとき、どのように解釈するか、という問題である。「みんなが満足すると」という言い方しかできないが、「みんなが満足」っていう概念は曖昧である。前もって理論的な説明が可能かを考えてからモデルを組む必要がある。
 これも逆の問題があって、もともと集団レベルの概念を個人レベルで分析するときである。例えば集団凝集性ならば、「集団凝集性の認知」という言い方しかできない。

4.あまり知られていない 
 これもバカにできない欠点だ。なんせ、論文に書きにくいからだ。でもこれからきっと広まっていく方法であると僕は確信している。


関連文献

清水裕士・村山綾・大坊郁夫 2006 集団コミュニケーションにおける相互依存性の分析(1) コミュニケーションデータへの階層的データ分析の適用 信学技報, 106(146), 1-6.

Muthén, B. O. 1994 Multilevel covariance structure analysis. Sociological Methods & Research, 22, 376-398.


引用文献

狩野裕・三浦麻子 2003 グラフィカル多変量解析 増補版 現代数学社

Kenney, D. A. & La Voie, L. 1985 Separating individual and group effects. Journal of Personality and Social Psychology, 48, 339-348.

清水裕士 2006 ペア・集団データにおける階層性の分析 対人社会心理学研究, 6, 89-99.

豊田秀樹 探索的ポジショニング分析─セマンティック・デファレンシャルデータのための3相多変量解析法 心理学研究,2001,72,213-218
  1. 2006/04/27(木) 01:34:52|
  2. 心理統計学
  3. | コメント:0
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